ファイナンシャル・ネットワーク
平成17年12月号
| 交換特例で権利調整をして有効活用 |
T.小作農地には税務上のデメリットが多い
小作農地の所有者に相続が発生しますと、その農地が市街化区域の一般農地の場合には路線価による通常の宅地として評価する事になり、そこから宅地に造成するための費用などを控除され、評価は調整農地と比較すると非常に高くなっています。耕作権割合を控除してもらっても評価は高く、何よりこの農地は物納が非常に困難ですし、売却は耕作権者の同意がなければできません。
その上に固定資産税は三大都市圏の特定市街化区域の農地については、生産緑地以外は非常に高くなっています。小作料はわずかしかもらえない(争いになった事例では最高裁判所判決で確定済み)上に高い固定資産税はほとんど地主が負担せざるを得ないわけです。固定資産税を安くするために生産緑地の指定を受けた場合でも、土地所有者は相続税の納税猶予を受けることができませんので、相続税の評価が高い状態で相続税がかかってきます。
地主のデメリット 相続税負担が大きい 相続税の納税猶予がない 固定資産税負担が大きい 収入(地代)はほとんどないに等しい 市街化区域の場合、地代より固定資産税の方が多く赤字 転用すれば大きな収入が見込めても実際には困難
耕作権を所有して農業を続けている方にとっては、固定資産税よりも安い耕作料で農業を続けながら、相続の時には耕作権が評価されて相続税が課税されます。しかし、生産緑地又は調整農地の場合には農地の納税猶予制度の適用を受けることができます。自らが農業を続けていくことができれば問題はありませんが、後継者がいないと納税猶予を受けることができませんし、何より耕作権そのものがどうなるのかという問題があります。かといってこちらから土地所有者に耕作権解消の話を持ち込むと不利になるのでは、と考えられておられる方も多いようです。
耕作権者のデメリット 相続税の納税猶予はあるが後継者問題 転売・転用が自由にならない 自ら申し出ると不利になるのでは?と不安
U.解消方法は4つ
| 離作料を払って返還 | 地主側に資金があるか?
耕作権者に譲渡所得税 |
| 土地を耕作権者に売却 | 耕作権者側に資金があるか?
地主側に譲渡所得税 |
| 土地を第三者に売却
譲渡代金を分割 |
資金不要(仲介手数料のみ)
両者に譲渡所得税がかかる |
| 耕作権と土地を交換
(土地を分ける) |
資金不要(登録免許税と不動産取得税)
両者に譲渡所得税がかからない |
V.耕作権と底地を交換で所有関係がスッキリと
耕作権者にとっては高齢化などで将来農業ができなくなったとき、自分の意向だけで自由に転用や売却(農地法上の許可や届出は当然必要です)ができるようになります。農業後継者がいない場合には将来耕作権を放棄せざるを得なくなる場面も考えられ、この対応は非常に有効です。一方従来は安い地代で耕作できていましたが、交換後は土地の固定資産税の負担をしなければならなくなります。市街化区域に編入されると固定資産税も高くなりますのでその負担増はデメリットになります。
農地所有者の側からは次のようなメリットがあります。
デメリットは土地の一部がなくなることですが、そのことは権利が相手にある以上は同じことといえます。強いていえば耕作権者が農業経営を維持できなくなったときに、有利な条件で解消できる可能性があることを放棄することになるということですが、これは相手が何らかの形で農業経営を続ける限りはどうしようもありませんので、思い切って交換することもよいのではないでしょうか?
- 現状では相続税の納税猶予の適用ができませんが、交換してその後に農業経営をしていれば納税猶予適用の条件を満たすことが可能になります。
- 固定資産税のほうが地代より高いという持ち出し状態の解消ができます。
- 転用売却がいつでもできます。(農地法上の許可や届出が必要)
W.交換は申告すれば税金がかからない
耕作権と底地を交換して所得税・住民税が課税されないようにするには次のような条件を満たしていなければなりません。
「5つの条件」交換が認められると、交換差金(土地以外にお金のやりとり)がなければ、確定申告 さえすれば譲渡所得税はかかりません。
- 交換により譲渡する資産と取得する資産が同じ種類でなければなりません。
- 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していなければなりません。
- 交換により取得する資産は、交換の相手方がその交換のために取得したものではなく、かつ、1年以上所有していたものでなければなりません。
- 交換により取得した資産を、譲渡した資産の直前の用途と同じ用途に供する必要があります。前の所有者の用途に関係なく、交換で取得した者が従来と同じ用途に使用すればよいことになっています。
- 交換時にお金のやりとりがあった場合、その金額が交換した資産の価額の多いほうの2割以内でなければ認められません。
A土地の人→5,000万円に対する譲渡所得税
B土地の人→3,500万円に対する譲渡所得税 それぞれかかる
よく質問を受けるのが、交換した後にすぐに転用、譲渡しても所得税の交換の規定の適用を受けることができるのかどうかです。交換により取得した資産は交換直前に利用していた用途に利用しなければなりません。しかし、いついつまで引き続いてその用途に利用しなければならないという規定はありません。耕作権者は現に農地として利用しているのですから、少なくなった耕作面積で引き続いて農業経営すればよいのですが、土地所有者は一旦耕作しなければならないことになります。もっとも、耕作していた人に一定の期間交換後も耕作をお願いすればこれも解決します。
交換の規定は自分自身が交換前と交換後に同一の用途に利用していればよいことになっていますから、交換の相手方がその直後に譲渡しても交換特例の規定の適用を受けることができます。
X.借地権も同じ
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