ニュースレター

 当ホームページでは、今仲清税理士事務所が関与先企業様に送付しております、ニューズレター『ファイナンシャル・ネットワーク』を3ヶ月遅れで公開させていただいております。


平成15年12月号 高齢化社会に向けた賃貸住宅経営
平成16年1月号 孫に財産を上手に譲る方法
平成16年2月号 平成16年度税制改正はこうなる
平成16年3月号 年金手取り大幅減少時代 そのしくみと対応策
平成16年4月号 まだまだ続くデフレの時代…資産活用の原理原則
平成16年5月号 認められる不動産管理料はいくら?
平成16年6月号 損益通算できるもの・できないもの
平成16年7月号 相続時精算課税制度利用者 78,000人
平成16年8月号 世間相場の家賃は適時の建物改修と適正な管理で確保
平成16年9月号 土地の贈与を復活する?
平成16年10月号 これからの税制改正の方向と対応策
平成16年11月号 来年4月からペイオフ全面解禁

ファイナンシャル・ネットワーク
平成16年12月号

配偶者に給与をいくら払うべきか


 今年もあと一月になりました。個人の不動産所得の方や不動産管理法人をお持ちの方から、この時期多い質問の一つに「専従者給与(個人の場合)または配偶者に対する給与(法人の場合)をいくらにすれば一番有利か」というものがあります。これに対する答えは様々な前提条件で違います。ご主人が会社勤めをされているのかいないのか。会社勤めの場合には、給与の配偶者手当や家族手当がカットされないかどうか。個人の場合には、その方の所得金額はいくらか。年金受給を受けているのかいないのか。万が一のときの相続税は高い累進税でかかるのかどうか、など様々な要素がありますので、専従者給与や法人が支払う配偶者に対する給与は慎重に決める必要があります。
 この答えはあくまで個別に判断する必要がありますが、平成16年からは専業主婦の配偶者特別控除が廃止されましたし、来年からは老年者控除が廃止され、かつ65歳以上の年金受給者の年金控除額が引き下げられます。今月はこれらの影響を考えた上でその判断のために必要な基礎知識をまとめてみましょう。


  T.配偶者控除と配偶者特別控除

 平成15年までは専業主婦の場合、38万円の配偶者控除と38万円の配偶者特別控除が夫の所得税計算の時に所得控除されていましたが、平成16年からは配偶者特別控除が廃止されました。配偶者の給与所得が年間103万円ある方の場合は、夫の所得税計算上、配偶者控除はありませんが、配偶者特別控除が従来通りあります。これは次の図のように配偶者の所得が増えるに従って配偶者特別控除額が減少し、141万円以上になるとゼロになります。配偶者が夫の不動産所得や事業所得などの専従者給与を受けている場合には、配偶者控除も配偶者特別控除も受けることができません。専従者給与を受けるかどうかの判断基準の一つが合計76万円の控除を受けるべきか、不動産所得や事業所得の経費として専従者給与を取るべきかで、これはこれらの所得が多いかどうかで判断していました。ところが、平成16年からは76万円ではなく、38万円での判断ですからよほどのことがない限りは専従者給与を取った方がよいといえます。
図表1


U.住民税負担も考慮する

 よくご質問があるのが103万円にすると配偶者に住民税がかかるのではということです。確かにそのとおりで、住民税の所得割は100万円を超えるとかかります。しかし、均等割りや国民健康保険は世帯単位で課税ですから、夫にかかる住民税と合計で考えれば103万円にしても問題ないといえます。次の表は夫の税金計算上、配偶者の年収と配偶者控除、配偶者特別控除、住民税、妻の社会保険の関係を簡単にまとめたものですが、夫の不動産所得や事業所得がある程度ある方は、基本的に130万円までの専従者給与又は不動産管理法人からの給与として支給を受けることがよいといえます。もっともこれらの所得金額が高額な方の場合には、130万円にこだわらず、夫の所得や法人の所得との兼ね合いでもっと高額の給与を取ることも十分にあり得ます。
図表2
(注)夫が会社員の場合。妻の社会保険料は、労働時間が一般社員のおおむね4分の3未満の場合
負 担 に は 様 々 な 線 引 き が あ る
妻の年収が
変わると
夫の税金は… 妻の税金は… 妻の
社会保険は…
配偶者控除 配偶者特別控除
所得税 住民税 所得税 住民税 所得税 住民税
100万円以下 受けら
れる
受けら
れる
受けら
れない
受けら
れない
かから
ない
かから
ない
保険料負担なし
100万円超
103万円以下
かかる
103万円超
130万円未満
受けら
れない
受けら
れない
収入に
応じて
額が変
わる
収入に
応じて
額が変
わる
かかる
130万円以上
141万円未満
国民健康保険、
国民年金に
加入し保険料
を負担
141万円以上 受けら
れない
受けら
れない


V.社会保険料負担は130万円以上?

 さて、個人事業の場合には健康保険は国民健康保険ですので、夫婦別々ではなく世帯単位で合計して国民健康保険料が決まります。しかし、不動産管理法人などを設立しますと法人ですから政府管掌の健康保険になり、年金も国民年金ではなく、厚生年金になります。不動産管理法人で夫婦ともに給料を受け取る場合には、先の配偶者控除や配偶者特別控除、住民税などとは別に、社会保険の負担の問題を考える必要があるわけです。夫は政府管掌の健康保険にはいるわけで、その被扶養者になるには年収が130万円未満でかつ労働時間が一般の従業員の概ね4分の3未満でなければなりません。言い換えると年収130万円以上又は労働時間が一般従業員の4分の3を超えていると夫の被扶養者になることができないことになります。(図表2の妻の社会保険のところには国民健康保険、国民年金となっていますが、妻が給与所得者であれば政府管掌健康保険、厚生年金です。)



W.本人の所得が多ければ多額の給与支給も

 不動産所得が仮に2,000万円もある場合には、本人に対して所得税・住民税が1,800万円を超える部分には50%の最高税率で課税されています。それならば、配偶者に例えば500万円の給与を専従者給与として支給することも一つの方法です。次のようなポイント、注意点がありますが十分に検討する価値があるでしょう。
  1. 配偶者への課税は給与所得控除がされた後の金額に対して課税されるため、給与所得控除分だけ余分に経費が認められたのと同じ効果がある。
  2. 配偶者控除がなくなるが、それを超える給与所得控除がある。
  3. 個人の不動産所得であれば健康保険や国民年金の負担は変わらない。(法人を設立すると配偶者も別に健康保険と厚生年金に入らなければならない上に、会社負担部分もある。)
  4. 専従者給与は事業に実際に従事し、かつ、その従事の程度に応じた給与の支給しか認められないので、不相応に高額になって否認されないように留意する。


X.夫婦ともに年金受給者の場合

 夫婦ともに65歳以上で年金を受給している場合には、不動産所得や事業所得のように個人であれば問題ありませんが、不動産管理法人を設立して、給与を受け取っているような場合には、年金受給額が減額されることがありますので注意する必要があります。特に、年金制度が改正され、今後もより一層厳しい制度になろうとしていますので留意する必要があります。もっとも、今後の年金法改正で給与に限らず不動産所得や事業所得でも年金支給額の減額をすることになる可能性もないとはいえませんが。



Y.公務員や会社員である夫の配偶者の給与

 不動産所得のある父親の子供が公務員や会社員で、その妻が父親の不動産所得の経理や不動産管理の手伝いをしていて、給与を受け取るというケースもよくあります。このような場合には何が注意点なのでしょうか?次の表は夫の年収500万円、子供一人の場合に、妻が給与としていくら受け取ると一番有利になるかを、税金はもちろん社会保険の負担も考慮して試算したものです。このように手取りが一番多くなるのは129万円です。ここでの前提条件は父親とその子供家族の生計が別で、子供の妻が他人と同じように実際に働いて給与をもらうことです。
図表3

Z.不動産所有法人の注意点

 さて、ここまで読んできていただきますと不動産管理法人や不動産所有法人をつくって節税するのも注意しなければならないと気づかれた方も多いでしょう。そこで不動産管理法人や不動産所有法人に関する注意点をまとめてみましょう。

1.不動産所有法人と不動産管理法人
 土地や建物を法人が所有して賃貸している形態を不動産所有法人といいますが、この場合収入が法人に直接計上されますので、所得の分散が容易にできます。土地や建物の所有が個人のままで、法人は管理のみを行うのが不動産管理法人で、この場合は税務上多くても総収入の15%程度しか法人の収入にすることができませんので、所得分散や節税効果が限られています。個人所有の土地を法人に移動するのは、バブル期に取得したものでなければ困難ですが、一工夫すれば可能です。建物が古く借入金のないものでしたら簡単にできますし、工夫すれば新しいものでも可能です。

2.注意点
  1. 会社を作って給料を支払うと、社会保険料の会社負担分を個人の時と比較して余分に支払う必要がある。
  2. 年金の受給を受ける年齢になると給料の受給により受給額が減額され、今後の年金改革でその減額制度が厳しくなる可能性が高い。
  3. 将来の税制改革で給与所得控除額が削減される可能性があり、その場合節税効果が大幅に削減されることもあり得る。


[.相続税対策として高額の給与を配偶者に

 ここまで所得税対策を中心とする収入分散としての主に配偶者に対する給与支給についてまとめてきましたが、このことは一方で相続税対策としても非常に重要です。専業主婦の場合には、その配偶者自身の両親からの相続か、自身が結婚するまでに貯蓄した資金を運用したものしか固有の財産として認められません。ご主人の所得を奥さんの名義で預金していてもその大元はご主人の所得だからです。夫婦が協力して形成した財産に対する貢献は相続税の配偶者控除(財産の半分又は1億6,000万円まで相続税がかからない)で調整されることになっています。
 ご主人名義になっている不動産所得から奥さんが帳面を付けたり、集金をしたり、物件の掃除を毎日したりして、専従者給与をもらって、これを奥さん名義の預金にしておけば何の問題もなく奥さんの財産として認められます。もちろん会社を作って給与の支払いを受けても同じです。何もしないでご主人の預金を一生懸命増やすと相続税が同時に増えていきますが、こうすれば奥さんが支給を受けた給与部分は相続税の課税から除外されるわけで、相続税の負担割合の高い方は、所得税や配偶者控除、年金支給額の点で不利になっても専従者給与や会社からの給与を多くする方が有利なケースもあります。
 これらを十分検討して適切な対策を実行しましょう。実行の際には遠慮なく私どもにご相談ください。


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