ニュースレター
当ホームページでは、今仲清税理士事務所が関与先企業様に送付しております、ニューズレター『ファイナンシャル・ネットワーク』を3ヶ月遅れで公開させていただいております。

ファイナンシャル・ネットワーク
平成17年1月号
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、賃貸不動産をお持ちの方にとっては、入居者の入れ替わりや維持管理のための修繕、改装がつきものです。これをしっかりと実行しないと賃料が下落したり、入居者確保がままならず空室になってしまったりします。最近のように競争が激化してきますとその傾向が強くなってきます。また、事務所ビルを賃貸住宅に転用するという『コンバージョン』という方法で賃料確保を図る方法も良く採られています。郊外型店舗に長期間賃貸していた物件の契約期間が終わったり、契約期間中にテナントの経営状況が不調で撤退したりして、その建物の転用や改装をすることもあるでしょう。今回はこれらの際に支出する費用を必要経費にできるかどうかについてまとめてみました。実行した後では遅いので、その前にこれらの取り扱いを十分把握した上で支出の内容を検討してから実行したいものです。今月はこれらの影響を考えた上でその判断のために必要な基礎知識をまとめてみましょう。
T.現状を維持するための支出は必要経費
建物などの修理改良のための支出のうち、現状を維持するためのものは必要経費になり、その建物などの耐用年数を長くしたり、その価値を高めたりする支出は必要経費にならず、建物の取得価額の追加分として減価償却という形で長期に渡って費用化されます。賃貸住宅の入居者が退去して次の入居者のために壁紙を張り替えたり、畳の表替えをしたりすることは、まさに現状を維持するものですから全額必要経費になります。ここでは金額の多い少ないは問題にならず、その使途により全額必要経費になります。
U.明らかに経費にならないもの
一方賃貸店舗について、テナントからの要望で増築した場合や最近の流行にあわさないと入居者募集が厳しくなってきたので、賃貸住宅の押入をクローゼットに改装したような場合は明らかにその価値を高めたり新たなものを付加したりしていますので、原則として必要経費にはなりません。ところがその場合でも古い押入れ部分を取り外すための工事代やその押入れの材料を取り除く場合はどうなるのかという問題があります。そこで細かく取り扱いの基準が決められています。
V.30万円未満は必要経費に
一つの修理や改良が20万円未満の場合にはその支出は全額必要経費になります。ところが平成15年4月1日から平成18年3月31日までにこれらの修理や改良をして、賃貸した場合には30万円未満まで必要経費として良いことになっています。ただし、この適用は青色申告をしている人にしか認められませんし、次のような明細を不動産所得の計算明細書に記入しておくことが条件です。これを記入せずにただ単に雑費や修繕費などとして処理していると、20万円未満のものまでしか認められませんので注意してください。
W.10戸の湯沸かし器を全部取り替えた
一つの修理や改良が30万円未満の場合には全額必要経費になるということですが、それでは一つの賃貸ビル全体の50個の窓枠をスチール製のものからアルミサッシに換えて、その費用が1個について28万円だとするとどうなるのでしょう。全体では1,400万円ですが、1個だと28万円です。建物に窓がないと賃貸ビルとして成り立ちませんからこの窓は建物そのものを構成しています。窓を一つ一つ切り離すことはできませんので、この場合には1個28万円で30万円未満という考え方ができなくなり、一度に必要経費とすることができません。
それではアパート10戸の賃貸をしている場合に、湯沸かし器が古くなったので10戸を一度に入れ替えた方が一つ一つ順に新しくするより安くつくので、一度に入れ替えて、その費用が1個について20万円、全体で200万円かかったとするとこれはどうでしょう。この場合には原則として先ほどの表のように明記してあれば全額経費とできます。1個について199,000円,10個で199万円であれば表のような明記がなくても全額費用とできます。
図表
X.通常の維持管理になるものならないもの
このように金額基準ではっきりしていればよいのですが、そうではない場合でもTの「現状を維持するための支出」のようにはっきりしているものもあります。それでは具体的にどのようなものが通常の維持管理になり、どのような場合がならないのでしょう。
1.通常の維持管理(必要経費になる)
- 10年に一度程度の外壁の塗り替えや吹きつけ
- 入居者入れ替え時の壁紙の張り替えや畳の表替え、修繕
- 古くなったのでガス給湯器を同じ機能のものに取り替える
- タイルの目地が一部剥がれてきたので修理した
2.資本的支出(必要経費にならない)
- モルタルの外壁にタイルを張り付けて見栄えをよくした
- 外壁にサイディングをして見栄えをよくした
- 屋根の全体を葺き替えた
- ガス給湯を1カ所給湯から2カ所給湯に切り替えた
- タイル張りの外壁が35年経過したので全面的に張り替えた
Y.どちらになるか不明なとき
古いものを取り外して新しいものに換えたような場合には、修繕費になるものとならないものが混在していてよくわからないことになります。このようなときには形式的に次のような基準で判定することになっています。まず形式基準で判定し、それもだめなときは割合基準で判定します。
1.形式基準・・・ 次のいずれかの要件を充足していれば「修繕費」
- 一つの修理・改良が60万円未満
- 前年12月31日の取得価額の10%以下
2.割合区分・・・ 次のいずれか少ない方が「修繕費」
- 支出金額の30%
- 前年12月31日の取得価額の10%
割合区分法を適用したときは以後継続して適用する必要があります。
事例
Z.ピッキング対策や事務所を賃貸住宅に
このように見てきてもやはりどうしても難しい部分が残ります。最近よくあるのが盗難対策、特にピッキング対策としてドアの鍵を一斉に取り替える場合です。1戸当たり6万円、30戸分とすると180万円になります。ドアの鍵は先ほどの窓と一緒で、なければ建物を構成できませんから建物と一体と考えられ、必要経費にならないという考え方もできます。しかしこれは必要経費とされます。賃貸ビルの事務所部分を賃貸住宅に転用するコンバージョンを行った場合には、原則として必要経費とできません。事務所として利用していたときの施設を一部取り外すようなことがあれば、その取り外すのにかかった工事費やその古い部分の価格は必要経費と考えられますが、その場合には形式基準や割合基準を使うことになります。
このように容易に判断できないこともありますので、実行の際には遠慮なく私どもにご相談ください。
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