ニュースレター
当ホームページでは、今仲清税理士事務所が関与先企業様に送付しております、ニューズレター『ファイナンシャル・ネットワーク』を3ヶ月遅れで公開させていただいております。

ファイナンシャル・ネットワーク
平成17年3月号
定期借地権は、戸建て住宅用が低迷していますが、定期借地権付き分譲マンションは結構人気を呼んでいますし、事業用地についてはロードサイド店舗を中心に定期借地権で賃貸する事例が多くあります。今回、国土交通省が財務省に対して質問をして、これに答える形で「定期借地権の前払い一括地代の税務上の取扱い」が明確になりました。
今後土地を定期借地権で賃貸借する場合には、従来のように保証金方式での一時金のやりとりではなく、地代を一括して前払いし、一方で期間満了や中途解約時の債務不履行に備えるための敷金又は保証金などを預かるという方式が、広がる可能性が高いと思われます。特にロードサイド店舗に向いた土地をお持ちの場合には、この取扱いがどのようなものなのかをしっかりと理解して、今貸している店舗の契約更改時や新規契約時などにこれを活用する必要があります。
また、農地を賃貸するときに基盤整備費用をテナントに負担させると、その負担してもらった分が不動産所得となりますが、この課税をされないで済む方法が明らかになりました。今回はこれらについてまとめました。
T.一括前受地代は契約期間で均等に課税
今般、国土交通省から財務省への照会に対する回答という形で、一定の条件の下で前受地代の額を契約期間の経過に応じて均等に収益計上すればよいことが明らかになりました。従来は、受け取った権利金に対して一時に課税されていたわけですから、非常に有利になったといえます。このように定期借地権を設定して受け取った権利金を一時に収益としないで、期間の経過に伴って収益計上するということは、地代の前受けをしていることが前提です。つまり、万一賃借人が契約期間の途中で建物を取り壊して中途解約した場合には、未経過分の地代を返還する契約でないとこの取り扱いがされないことになります。本来、権利金という以上は、中途解約があっても未経過期間の地代相当分も返還しないものですが、今回の取扱いでの「期間の経過に伴って収益計上できる権利金」とはそのことを指しますので誤解のないようにご理解ください。しかし、定期借地権で貸すと借りた相手は自らの費用で建物などの高額の投資をするわけで、建物を自ら取り壊して中途解約することは考えにくいものです。そう考えると前払地代といっても実質的にはもらいきりの権利金とあまり変わらないということもあります。
U.建物取壊し保証分は別途預かる
契約期間満了時や中途解約時に賃借人が建物を取り壊さずに契約を解除して退去されてしまうと、建物取り壊し費用を土地所有者が負担せざるを得ないことになりかねません。これに備えるための敷金又は保証金を一括前受地代とは別に預かっておく必要があるでしょう。
V.地主にとってこんなに違う手取額
次の表は契約期間20年、権利金1,000万円、月額地代40万円で契約をした場合の従来の税金(所得税と住民税合計)と、前受地代とした場合の税金の比較です。年間地代480万円を含めた他の課税所得金額が所得控除後で2,000万円だとすると(1,800万円を超えると同じ)従来の取扱いと比較して手取りで475万円多くなります。言い換えるとその分、税金が少なくなります。もっともその分は翌年以降徐々に課税されていきますので結果的には同じになります。しかし、とりあえずの資金繰りはずっと有利ですから、その資金分を他の資金運用や相続税納税資金などに利用することができます。
図表1
W.賃借人も権利金を費用化できる
定期借地権で賃借したときに権利金を支払うと、税務上支払った権利金は契約不履行などがない限り返還されないにもかかわらず、一時に損金に計上できず、中途解約又は期間満了に伴って建物取り壊しの上、更地にして返還してはじめて損金に計上できることとされていました。今回の取扱い明確化でこれが期間の経過に伴って損金に計上できることになりました。従来、保証金方式で対応していた事業者も前払地代方式に変更するケースが増加するのではないでしょうか。
X.資金が少なく済み費用化もできる
前払地代は契約期間の経過に伴って返還されないわけで、保証金と土地代の合計より少なくなるものと思われます。資金調達を少なく押さえることができ、財務内容の悪化を少しでも防ぐことができます。保証金は確かに契約期間が終了して建物を取り壊せば返還されますが、実際には建物取り壊し費用で消えてしまいます。結局、保証金は契約期間中に資金が寝た状態で続くだけということになります。
Y.税効果を考えると非常に有利
収益を安定して計上している企業にとって、支払った前払地代を期間に応じて費用化できるということは、その分税金を節税できるということでもあります。その節税効果と、保証金として支払って資金が寝ている間の金利と、その間の財務内容に与える影響を考えると、特に法人事業者である賃借人にとっては非常に有利となるでしょう。
Z.契約に注意
前払地代であるから期間の経過に伴った費用計上が認められます。従って、契約期間の途中で中途解約する場合には、未経過地代は返還されなければなりません。賃借人側からすればその面でも有利になります。とはいっても、土地所有者側からすればその分建物取り壊し義務の不履行時の建物取壊し費用のリスクが発生するため、そのままでは契約条件の悪化につながります。当然その分の担保としての敷金若しくは保証金を求めるでしょう。その分は別途考慮する必要があるでしょう。
[.法人は減損会計対策にも
平成17年4月1日以降に迎える決算から、上場企業や負債総額500億円以上の法定監査が必要な法人については、減損会計が義務づけられます。土地を更地のままにしておくとその評価額は購入簿価ではなく、現在の時価、それも収益還元価額を反映する非常に厳しい価額になります。一方更地でなく建物が建っていてもそこから上がる収益を基準にして評価額が計算されますので収益性の低い物件を持っていると財務内容が悪化することになります。更地の土地を定期借地権で収益を生むように工夫すると、その時点から現に上げている収益をもとに評価されることになりますので、更地の状態の評価額より高くなります。自社が土地の上に収益物件を建築して収入を得ることも考えられますが、本業以外の不慣れな事業に手を出してリスクを負い、資金を使ってしまうより、今は本業に資金を使い競争力を強化すべきでしょう。その意味で定期借地による土地利用が有利といえます。
\.法人事業者サイドは前払地代方式?
仮に契約期間20年の事業用借地契約を結び、前払地代を1億円支払ったとします。同じ金額を従来は権利金として支払っていたとして、これと比較すれば次のような違いがあります。@権利金の場合には契約が終了しなければ支払った権利金を費用にできませんが、前払地代の場合には期間の経過に伴って費用化できます。Aその結果、毎年500万円ずつ費用化でき、課税所得がマイナスにならない限り、実効税率40%として税金が少なくなる分、キャッシュフローが毎年200万円プラスになります。Bこれは1億円に対して2%になります。法人事業者にとって、従来の権利金方式や保証金方式による定期借地より有利になります。
1.地代を毎年支払うより有利?
一括して前払地代として支払うよりも、毎年支払う方が資金繰り上も金利から考えても有利ではないかと考えられます。地代を一括して支払うことによって一時金としての金額は抑えられるはずですし、地代とは別に支払っていた権利金や保証金を前払地代に振り替えることによって上記のような大きなメリットがでます。
2.大型証券化プロジェクト
大規模商業施設運営をする際には、J−REITに組み込むことを当初から想定していることが普通になっています。このような場合には、収益・費用の平準化が重要ですが、その意味では決定的な役割を果たす可能性が高いでしょう。事業用借地の契約可能期間が法改正で50年未満に延長されると大型物件の前払地代方式による事業用借地契約事例が相当多くなると思われます。
3.ロードサイド店舗
これまでのロードサイド店舗出店の際は、建設協力金方式か事業用借地の保証金方式が多かったようです。保証金方式が多かった理由は、権利金の時には地主に対して一時に課税されることと、賃借人が支払った権利金の費用化が契約終了時までできなかったことが理由でした。上記のように今後は前払地代方式が主流になる可能性が高いでしょう。事業用借地の契約期間が延長されるとしても、個人地主が多いロードサイド店舗については、長期契約は少ないのではないかと思われます。出店側も事業展開の機動性を考えるとよほどの好立地でないと長期契約は困難でしょう。
4.定借分譲マンション
工場用地や倉庫用地で利用できなくなった法人所有地で、都心部や急行停車駅の近接地を有効活用する場合には、定借分譲マンションが一つの選択肢として考えられます。分譲マンション相場そのものが非常に下がっているため、所有権の分譲マンションと価格差がつけにくく事業化するのが困難ですが、立地さえ優れていれば十分事業化が可能です。価格差を明確にするためにも前払地代方式で商品化することがよいでしょう。
5.高齢者向け施設
高齢化社会を迎え、介護保険が定着してきたこともあって、最近、土地有効利用の有力な方法として高齢者向けの施設運用が注目されています。法人所有地をこのような用途に利用することも考えられますが、定期借地として賃貸するには様々な問題点がありますので留意したいものです。
※無断複写・複製・記載文書を承諾なしに転載することを禁止します。

トップページへ