ニュースレター

 当ホームページでは、今仲清税理士事務所が関与先企業様に送付しております、ニューズレター『ファイナンシャル・ネットワーク』を3ヶ月遅れで公開させていただいております。


平成16年5月号 認められる不動産管理料はいくら?
平成16年6月号 損益通算できるもの・できないもの
平成16年7月号 相続時精算課税制度利用者 78,000人
平成16年8月号 世間相場の家賃は適時の建物改修と適正な管理で確保
平成16年9月号 土地の贈与を復活する?
平成16年10月号 これからの税制改正の方向と対応策
平成16年11月号 来年4月からペイオフ全面解禁
平成16年12月号 配偶者に給与をいくら払うべきか
平成17年1月号 リフォーム支出 費用にできるかできないか
平成17年2月号 無風の平成17年度税制改正
平成17年3月号 定期借地権一時払地代の税務明確に
平成17年4月号 一括前受地代定期借地権活用法

ファイナンシャル・ネットワーク
平成17年5月号

相続・遺言のトラブル防止


 最近、不動産は自宅だけで金融資産を足しても相続税の基礎控除以内の財産というようなケースでも、相続で争いになる例が増えてきています。@相続人が勝手に遺産を処分した、A相続人が親の財産を隠している、B遺言書の内容を巡って相続人間でトラブルになった、C相続人が勝手に遺言書の内容を書き換えたなど様々なトラブルがあります。そのためか、公正証書遺言の作成件数は平成元年当時4万件程度だったものが、平成15年には約1.5倍の64,376件にも増えています。同時に家庭裁判所に持ち込まれる遺産相続の調停件数も年々増加しています。いわゆる「争族」争いを防ぐにはやはり遺言書を作成しておくのがいちばんです。だからといって遺言書さえ作成しておけば何の心配もないというものでもありません。そこで今月は相続・遺言のトラブル防止についてまとめてみましょう。


  T.遺言書作成は公正証書で

 遺言書作成の方法には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言があります。自筆証書遺言は全文を自ら自筆で書いて署名押印、保管も自ら行うもので、費用も少なく手軽に作成できます。しかし、日付を書かずに無効になったり、遺族が隠したり破棄したりあるいは改ざんされる危険があります。原本が1通しかないため、紛失したり遺族が発見できないで数年後に見つかったりということもあります。
 その点、公正証書遺言であれば費用はかかりますが、公証人が遺言者の意志をキチンと確認してそのとおりに遺言書を作成してくれます。原本は公証役場で保管してくれますので不備、紛失、偽造などの恐れがなく安心です。相続発生後も自筆遺言は家庭裁判所の検認手続きを受ける必要がありますが、公正証書遺言はその必要がありませんし、すぐに遺言を実行できるという利点もあります。


U.公正証書作成費用

 問題はどの程度の費用がかかるかということですが、公正証書遺言を作成をするには公証人と証人2人への料金がかかります。次の表は公証人の費用の一覧表ですが、財産の額と相続人の人数によって異なります。
  1. 公証人手数料・・・例えば3億円の財産を3人の相続人が3分の1ずつ均等に相続する場合には一人当たり43,000円×3=129,000円ですが、これを一人で相続すると43,000円+13,000円×(3億円−1億円)÷5,000万円=95,000円というわけです。
  2. 遺言手数料・・・財産価格が1億円までの場合には(1)に人数に関係なく11,000円が加算されます。1億円を超えるとこれは不要です。
  3. 用紙代・・・一枚当たり250円かかります。遺言書の枚数によって異なります。
  4. 出張料・・・遺言者が病気で外出できないときには出張してもらって遺言書を作成してもらえますが、公証人に出張料の支払が必要になります。公証人手数料が(1)の1.5倍になるほか、日当2万円(4時間以内は1万円)と交通費(実費)が別に必要です。
  5. 証人・・・証人が必ず2人必要になります。将来相続人や受遺者になる人やその配偶者、直系血族、未成年者は証人にはなれません。証人の報酬に決まりはありません。
図表1
  
目的の価格 手数料
               100万円まで          5,000円
               200万円まで          7,000円
               500万円まで          11,000円
              1,000万円まで          17,000円
              3,000万円まで          23,000円
              5,000万円まで          29,000円
                1億円まで          43,000円
以下超過額5,000万円ごとに3億円まで          13,000円加算
以下超過額5,000万円ごとに10億円まで          11,000円加算
以下10億円を超える場合          8,000円加算
遺言手数料の場合 目的価格が1億円まで11,000円加算



V.遺言書作成の時に留意しなければならないこと

 遺言書を作成するときには様々なことに配慮する必要があります。その中でも一番重要なことは、普段の言動です。生前「私が死んだらみんなで平等に分けてくれ」と常々言っていて、いざ遺言書をあけてみたら「妻に半分、長男に半分」と書いてあったら、一緒に住んでいない長女や次男は「これはお父さんの意志ではない。母と長男が父をだまして書かせた」と言って裁判に発展するかもしれません。まずは遺言書を書く側が自分の意志をはっきりさせ、そのときの気分や子供や孫の気を引くためにいい加減なことを言わないことです。そして、遺言書を書いたという事実は話すにしても、その内容は一切話さないほうがよいでしょう。それをきっかけにして親子関係が微妙におかしくなるということもあります。


W.遺留分にも注意

 仮に遺言で「第三者にすべての財産を遺贈する」として、例えばユネスコにすべての財産を遺贈するとした場合でも、直系尊属だけが相続人の時には被相続人の財産の3分の1を、そのほかの場合には2分の1を相続する権利が確保されます。このことを遺留分といいます。ただし、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。相続でもめないように財産を妻と同居している長男に相続させることとする遺言書を作ったが、相続発生後に他の子供から「遺留分の減殺請求」を受けてしまって、大変なもめ事になったということのないようにする必要があります。「遺留分の減殺請求」は相続の開始があったことを知った日又は減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った日から1年以内に、実際には内容証明郵便などで行う必要がありますが、そのような事態にならないように遺言書を作成しておくことがまずは肝心なことといえるでしょう。


X.過去の贈与財産を合計する遺留分侵害額の計算

 遺留分の侵害があったかどうかの計算上注意しなければならないのは、過去の贈与財産をすべて合計するということです。遺留分の算定方法は次の表の通りですが、相続開始時点の被相続人の財産の合計に相続人が過去に贈与を受けたすべての財産の額を合計することになります。といっても成人するまでの養育費用は加算しませんが、婚姻のための持参金や嫁入り道具、生計の資本のための贈与(独立資金、事業資金援助、住宅取得資金、海外留学資金など)は加算する必要があります。

図表2
遺留分侵害額の算定方法
(民法第1028−1035条)



算定の基礎財産A×その相続人の遺留分率B
−その相続人の特別受益額C−その相続人の
純相続分額D
プラス相続財産額+贈与の額−相続債務額
相続人が直系尊属のみのときは1/3、その他の
場合は1/2になる。権利者複数のときはこれに
各自の法定相続分割合をかけた率
その相続人の受けた贈与額+受けた遺贈額
その相続人が相続により得た財産額
−相続債務分担額


図表3
特別受益に当たるもの
@遺贈
 遺言で贈与された財産
A生前贈与
 ・婚姻のための持参金・支度金(通常の挙式費用は含めない)
 ・養子縁組のための持参金・支度金
 ・生計の資本のための贈与(独立資金、住宅取得資金、海外
  留学資金など。生活費の援助は含めない)
B生命保険金、死亡退職金も場合によっては特別受益になる


 次の事例は被相続人の財産が3億円で債務が5,000万円、生前に長男の住宅取得資金贈与額が3,000万円、長女の海外留学資金が2,000万円とした場合のそれぞれの遺留分です。つまりこの金額を超える財産を遺言書で相続することになっていれば、本人に不満があったとしても遺留分の減殺請求ができないということになるわけです。
< 事 例 >

被相続人の財産  3億円   債務  5,000万円
生前贈与  妻 0円  長男 3,000万円  長女 2,000万円
遺留分   妻1/2×1/2=1/4  長男・長女それぞれ 1/2×1/2×1/2=1/8ずつ
妻  (3億円−5,000万円+3,000万円+2,000万円)×1/4=7,500万円
長男 (3億円−5,000万円+3,000万円+2,000万円)×1/8−3,000万円=750万円
長女 (3億円−5,000万円+3,000万円+2,000万円)×1/8−2,000万円=1,750万円

Y.子供がいない夫婦の注意点

 子供さんがいらっしゃらない方から受けた相談で、「私が死んだら妻が全部の財産を相続するのですよね?」と言われ、「ご兄弟はいらっしゃいますか」と聞くと「います」と答えられた方がおられました。この場合には兄弟姉妹が法定相続人として全部の財産の4分の1を相続する権利があります。このような場合にこそ後に残された奥さんが争いに巻き込まれないよう、また妻が安心して自宅に住み続けることができるよう、残された後の生活に困らないように、「すべての財産を妻に相続させる」という遺言書を作成する必要があります。兄弟姉妹には遺留分がありませんので何の心配もありません。ご本人が亡くなった時点で親がご健在の場合には、親に遺留分がありますのでこの点は注意してください。
 この方が亡くなって、妻が亡くなった場合に妻に兄弟姉妹がいると、すべての財産が妻の兄弟姉妹のものになります。もともと夫の先祖から受け継いだ不動産が何の関係もない人のものになるのは納得できないということもあります。この場合には甥や姪などに遺贈する遺言書の作成が考えられます。自分たちで築いてきた財産だけの場合に最近多いのが社会福祉事業や育英資金などに遺贈することです。


Z.母の面倒を見る条件で預金の遺贈…面倒を見ない

 せっかく亡くなったお父さんが妻のことを案じて「預貯金5,000万円を母親の面倒を見ることを前提として長女に相続させる」という遺言書を書いていたにもかかわらず、肝心の長女が面倒を見ず、預貯金の権利だけを主張したような場合にはどうなるのでしょうか?このような場合には、長女を含めた相続人全員で母の面倒を見る人を決め、5,000万円の分割について遺産分割協議をして決める方法が良いでしょう。しかし、長女がこの5,000万円の権利のみを主張することも考えられます。そのような場合には、相続人は期間を定めて義務の履行を催促し、その期間内に履行されない場合は、負担付き遺贈の遺言を取り消すように家庭裁判所に請求することができます。(民法第1027条)


[.遺言と違う遺産分割をしたい

 遺言書の内容と違う分割をしたい、あるいは遺言通りに分割すると相続税が高くなってかえって損をするので財産分割の内容を変更したいということもあります。このような場合には相続人全員が合意すれば遺言と違う内容の分割をすることができます。遺言書に遺言執行者が決めてあっても、相続人全員が合意すれば遺言執行を妨げることにはならないとされていますが、もしそのような場合には事前にその旨を連絡しておいた方がよいでしょう。とはいえ、被相続人は相続人のために想いを込めて遺言書を作成したわけですから、その遺志を無視するような分割はたとえ相続人全員が合意したとしてもすべきではないでしょう。次に述べますように税務上不利にならないようにするとか、やむを得ない場合に限るべきでしょう。しかし、相続税がかかる場合には相続税の申告期限である相続開始から10ヶ月以内に遺産分割協議書を作成しないと問題が出ますので注意してください。


\.遺言書作成の時には税理士に相談を

 相続税がかかるだけの財産があると、相続財産の分割のしかたによっては税金の額が異なります。配偶者の方の法定相続分と1億6,000万円との多い方までは相続税がかからないということはもちろんですが、小規模宅地の評価減額や配偶者の方の次の相続税対策を考えた分割など考えなければならない点は多くあります。これらを考慮した上で遺言書を作ることが税対策と争族対策を両立させる上で重要です。ましてや配偶者の方が固有の財産をお持ちの場合にはなおさらです。遺言書作成時にはぜひ税理士にも一声かけましょう。


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