ニュースレター
当ホームページでは、今仲清税理士事務所が関与先企業様に送付しております、ニューズレター『ファイナンシャル・ネットワーク』を3ヶ月遅れで公開させていただいております。

ファイナンシャル・ネットワーク
平成17年6月号
4月からいよいよペイオフが全面実施され、万一金融機関が破綻すると決済性預金を除いて一金融機関につき、すべての支店の預金を合計して1,000万円とその利息しか保護されない制度がスタートしました。名義の名寄せはあくまでも一人一人ですから、家族5人いれば合計5,000万円とその利息まで保護されます。そのようなこともあって、金融資産を贈与したいという方からの相談を受けることも多くなってきました。このニュースレターでは、過去に何度も贈与について取り上げてきましたが、今回は金融資産の贈与についてその有利不利をまとめてみることにします。金融資産を贈与する場合の特徴は、贈与のための費用がほとんどかからないことにあります。その意味で、通常贈与で長期的に財産を移転するには金融資産が向いているでしょう。上場株式で安定して配当のあるものであれば配当を無税で贈与したのと同じ効果があります。しかし一方で、収益を生む不動産を精算課税贈与した方が最も効果がある場合もあります。
T.金融資産は通常贈与が有利
預金や国債などの債券、公社債投資信託、株式投資信託などの金融資産は相続発生時点の価額で評価されます。これらのものは基本的に現金化した金額が評価額になりますので不動産や株式、定期金に関する権利、同族会社株式などのように評価差額を利用した節税はできません。しかし、贈与税の基礎控除や、相続税の実効税率と贈与税の実効税率との差を活用した長期的な対策をするには、金融資産は不動産を贈与するより不動産が値上がりしないことを前提として一般的に有利といえます。
U.金融資産は配当や利息の移転効果と物価変動
公社債投資信託、株式投資信託、不動産投資信託や株式は、元本割れするリスクはありますが、高い配当利回りを手にできるものもあります。長期保有を前提に、長期に高い運用益を得ているこれらのものがあれば、精算課税贈与することによって配当や利息を無税で贈与する効果があります。現状の定期預金の金利水準ではほとんど効果がありませんが、年利回り4%前後のリートやもっと利率の高い外国債券や投資ファンドであれば、確かにリスクはありますが、利息や配当などの収益部分は贈与以後無税で移転できることになります。このようなものを相続時精算課税制度で一挙に贈与することも考えられます。運用益部分は無税で贈与したことと変わらないという効果があります。
多額の金融資産を相続発生まで所有していたときには、利息や配当などの収益が相続財産として積み上がってきます。贈与しないで相続時まで残すということは、その分不利になるということでもあります。問題は物価水準ですが、金融資産そのものはデフレになると相対的に資産の価値は上がりますが、インフレになると資産の価値が下がります。一方相続税については物価水準が変わったからといって特に有利不利はありません。
V.精算課税は利回りが低いとほとんど効果がない
金融資産には精算課税制度を選択した場合には、不動産を上手に贈与したときのように、評価引き下げ効果、値上がりによる評価額との差額、特例活用などのメリットが少ないか若しくはありません。精算課税制度を利用して金融資産を贈与する場合にはよほど高い運用利回りがないと、不動産を上手に精算課税贈与した場合と比較して効果がほとんどないといえます。しかし、これはあくまでも精算課税贈与を行うときに何を贈与するかを考える場合であって、財産のほとんどが金融資産の方は高利回り商品の精算課税贈与ということも十分考えられます。
W.長期間かけた通常贈与は効果抜群
金融資産を中心に相続財産5億円を所有している方が、何もしないで10年後に相続が開始した場合には、一次相続、二次相続合計で相続税が9,850万円かかるところ、ふたりの子供とその配偶者及びそれぞれの孫2人ずつ合計8人に、毎年200万円ずつ10年間贈与し続けた場合には、相続税の総額と既に支払った贈与税を合計して5,656万円で済むことになります。その節税効果はなんと4,194万円にものぼります。
【事例】
・相続財産 5億円(自宅1億円・預金等4億円)
・相続人 配偶者と子供2人 子供2人にはそれぞれ配偶者と子供(孫)2人ずつがいるとします。
・毎年、子供とその配偶者及び孫2人(計4人)×2組、計8人に200万円ずつ贈与したとします。
8人×200万円=1,600万円×10年=1億6,000万円
・子供は相続で財産を取得するため、3年内贈与の持戻し対象となるとします。
X.相続税の累進課税の高いところが減少する
この事例では、5億円の相続財産の場合の相続税の累進税の高いところでは、一次相続でも二次相続でも40%の税率で課税されてしまいます。一人200万円であれば贈与税は9万円で済みますので、贈与税の実効税率は4.5%です。この税率の差が実際には贈与後の相続税と先に支払った贈与税の合計で5,656万円にしかならずに、4,194万円もの節税になるわけです。
Y.相続開始前3年内の贈与財産の加算
相続税の計算をする際に、相続によって財産を取得した相続人や遺言によって財産を取得した人(事例の場合には子供の配偶者や孫は相続で財産を取得していないので対象外になります)が、相続開始前3年以内に受けていた贈与財産は、相続財産に加算して相続税を計算することになっています。その上で相続税の額から既に支払った贈与税があれば差し引くことになります。この事例では一旦10年分の贈与財産を差し引いた上で、子供2人分の3年分を加算して相続税を計算しました。加算された3年分の贈与税は相続税から差し引かれますので、既に支払った贈与税の3年分を足して合計を相続税額から差し引いています。
Z.急上昇している上場株式を上手に贈与する
上場株式を贈与した場合の評価額は、証券取引所が公表する最終価格のうち最も低い金額とされます。
- 贈与の日の終値
- 贈与の月の終値の月平均額
- 贈与の月の前月の終値の月平均額
- 贈与の月の前々月の終値の月平均額
このように上場株式が急激に値上がりしているときには、現金を贈与されるよりも上場株式を贈与した方が有利ということになります。なお、国内の2以上の証券取引所に上場されている株式の価格は、その納税者が選択した証券取引所が公表する価額によって良いこととされていますので、いずれか低い価額を選択すると良いでしょう。
[.上場株式贈与の手順
上場株式を贈与するときには次のような手順で行い、税務上否認されるようなことのないようにします。
- この2、3ヶ月で急上昇した銘柄の上場株式を探します。
- 贈与したい金額の@の上場株式を購入します。
- 購入したAの上場株式を贈与します。
【事例】
\.売却を予定している場合の注意点
上記のような手順で贈与した直後に売却した場合には、租税回避行為があったとして、評価額を売却時の価額として課税されることもあります。また、株式の価額は相場によって刻々と変化しますので、贈与された株を売却するまでの期間に暴落することもあり得ます。結果としては現金贈与の方が有利だったということも考えられます。長期で保有するのではなく、売却を前提としている場合にはこれらのことを十分考慮しましょう。
].値上がり益よりも高配当を
企業買収が頻繁に行われるようになってきたため、買収の危険を低くするために株価を上げる目的や株主優遇策として、最近は配当を積極的に行う上場企業が増えてきました。ペイオフ全面実施による資金の分散投資という意味もありますし、低金利が続いていることもありますので高配当を得る目的で上場株式を持つことも一つの方法でしょう。
経営が安定している企業の株式を贈与してもらうと、もらった人にとっては配当という安定収入を確実に手にすることができます。
XI.損失をプレゼント?
贈与の場合には、取得価額は贈与した人からもらった人が引き継ぐことになっています。すでに十分値上がりしている上場株式をもっている人に、バブルの頃に買って大きな損失が生じている塩漬け株式を思い切って贈与すると、その損失を贈与することになります。
以上のように金融資産の贈与の原則は長期に渡って通常贈与で行うことですが、通常贈与の場合には以前にこのニュースレターでもお知らせしましたように、贈与の否認をされないようにもう一度注意点を確認した上で実行しましょう。また、株式の精算課税贈与を行うときには上記のような点に注意して行いましょう。いずれにしても実行する場合には私どもにご相談下さい。
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