ニュースレター
当ホームページでは、今仲清税理士事務所が関与先企業様に送付しております、ニューズレター『ファイナンシャル・ネットワーク』を3ヶ月遅れで公開させていただいております。

ファイナンシャル・ネットワーク
平成17年8月号
6月21日に政府税制調査会が、将来の個人所得税の課税をどうするべきかということをまとめた「個人所得課税に関する論点整理」を発表しました。これによると、@譲渡所得税をすべて分離課税にする、A不動産所得を廃止して事業所得と雑所得に分ける、B一時所得を廃止、C退職所得課税を強化する、D給与所得控除を実態に近づける、E配偶者控除・扶養控除の見直し、F住民税均等割りの引き上げ、Gその他を検討すべきとされています。
これらは来年からすべてについて、すぐに適用しようというわけではありません。しかし一部の項目については来年から適用されると思われます。例えば譲渡所得がすべて分離課税とされますと、ゴルフ会員権の譲渡損益を給与所得や不動産所得などと通算することが出来なくなります。ゴルフ会員権を譲渡すると損失が発生するケースが多いと思われますが、譲渡しようと考えておられる場合には今年中に譲渡した方が節税対策上は有利といえるかもしれません。不動産所得の廃止についても影響は大きいといえます。
今月はこれらについてどのように検討しようとしているのか?すぐに実施される可能性があるのか?実施されるとしたときの具体的な対応策などについてまとめました。
T.4年から5年程度かけて徐々に
平成18年度税制改正では、@平成18年から従来の半分になる定率減税を平成19年から全廃する、A住民税の税率を一律10%にすることはほぼ決定的ですが、その他の項目については早期に実現する可能性の高いものから、4年から5年程度かかるもの、検討はするが実現可能性の低いものなど、今のところ見通しがつきにくいものも含まれています。
@譲渡所得税をすべて分離課税にする、A不動産所得を廃止して事業所得と雑所得に分ける、B一時所得を廃止、C年金所得の新設、D住民税均等割りの引き上げ等は早期に、場合によっては来年から実施される可能性があります。E退職所得課税を強化する、F給与所得控除を実態に近づける、G配偶者控除・扶養控除の見直しなどは4年から5年程度はかかる可能性が高いでしょう。
図表1
| 項 目 |
内 容 |
影 響 |
時 期 |
| 譲渡所得 |
全面的に分離課税に |
ゴルフ会員権の譲渡損の
損益通算ができなくなる |
来年から? |
| 不動産所得 |
5棟10室以上…事業所得
5棟10室未満…雑 所 得 |
雑所得になると損益通算
できなくなる |
来年から? |
| 一時所得 |
雑所得とする。50万円控除
と2分の1課税廃止 |
生命保険の満期受取りの
税金が高くなる |
来年から? |
| 退職所得 |
20年超の控除1年につき
70万円が引下げられる
2分の1課税の見直し? |
退職金に対する課税強化 |
一部でも
来年から? |
| 給与所得 |
給与所得控除の引下げと
実費控除制度の充実 |
実質的に増税 |
4〜5年
かかる? |
| 事業所得 |
記帳実態にあわせた課税
適 正→今まで通り
不適正→一定額しか経費としない |
記帳の適正化と
経費の範囲の厳格化 |
4〜5年
かかる? |
| 配偶者控除 |
基礎控除と一本化?
夫婦合算課税? |
いずれの場合も増税 |
4〜5年
かかる? |
| 扶養控除 |
・「ニート」の排除
・税額控除制度へ移行? |
税額控除になると低所得者
は減税・高所得者は増税 |
4〜5年
かかる? |
U.ゴルフ会員権は今年中に売る?
ゴルフ会員権を譲渡したときの損益は他の所得と合算して課税されることになっています。もともと50万円の特別控除があり、特別控除した後の2分の1を他の所得と合算することになっていますが、損が生じたときには他の所得から差し引くことができます。損が生じたときはそのまま他の所得と差し引きでき、所得があるときには特別控除された上に2分の1に課税というのはおかしいのではないかということで、今回他の所得と切り離して課税することが適当との考え方が打ち出されたわけです。
ゴルフ会員権を今売ると損が生じることが間違いない方で売却を考えておられる方は、改正される前に譲渡した方が有利といえます。来年から必ず実施されると決まったわけではありませんし、ゴルフ会員権相場が値上がりする可能性もゼロとはいえません。その点は十分検討する必要があるでしょう。
V.不動産貸付は5棟10室以上の方が有利
平成11年7月号で詳しく「不動産貸付業の事業的規模の判定」としてお知らせしましたが、アパート・マンション・駐車場など不動産の貸付を行っている場合、同じ不動産所得で事業的規模については、次の基準により判定されることになっています。
(詳しくはホームページ
http://www.imanaka-kaikei.co.jpをご覧下さい)
- 社会通念上、事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付を行っているかどうか。
- 以下に掲げる事実のいずれか一つに該当する場合、又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等から見て、これらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われていると判断されます。
- 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数が概ね10室以上であること。
- 独立家屋の貸付については、概ね5棟以上であること。
- 土地の貸付件数については、貸室1室及び貸地1件当たりのそれぞれの平均的賃貸料の比や貸室1室及び貸地1件当たりの維持・管理費及び債権管理に要する役務提供の程度などを考慮し、地域の実情及び個々の実態に応じて、1室の貸付に相当する土地の貸付件数を、「おおむね5」として判定する。例えば、貸室8室と貸地10件の場合には事業として行われていると判定します。
図表2
| 不動産所得 |
他の所得と損益通算 |
| 5棟10室以上 ⇒ 事業所得 |
○ |
| 5棟10室未満 ⇒ 雑 所 得 |
× |
現在はこの規模に関係なく全て不動産所得とされ、赤字の場合には他の所得と損益通算することが出来ますが、報告書通りに実施されますと不動産所得はなくなり、事業的規模になると事業所得とされ、事業的規模に達しないと雑所得とされます。事業所得とされますと従来通り損益通算が出来ますし、青色申告の特典も利用でき、したがって専従者給与の支給や青色申告特別控除も認められます。しかし、雑所得になると損益通算出来なくなるのはもちろん、様々な青色申告にかかわる特典も得ることが出来なくなり、大変な増税になると予想されます。もう少しで10室以上になる方や5棟以上になる方は、更なる有効活用をすることが大きな節税につながることになります。
図表3
主な青色申告の特典
| 項 目 |
青 色 申 告 |
白 色 申 告(雑所得) |
| 専従者給与 |
その実態に応じて全額必要経費 |
1人当り最高50万円
(配偶者は86万円)まで |
| 損失の繰越控除 |
翌年から3年間繰越できる |
× |
| 青色申告特別控除 |
一 般 10万円
適正な記帳 65万円 |
× |
| 減価償却費 |
特別償却制度の利用ができる |
できないものがある |
W.生命保険の満期保険金が増税
一時所得を廃止して全て雑所得にすることが検討されています。一時所得の場合には50万円の特別控除をでき、その上で2分の1に課税されるしくみですが、雑所得には特別控除も2分の1も適用されません。何らかの対処がされるかもしれませんが、全くの増税になる可能性もあります。影響があるのは簡易保険や養老保険の満期保険金でしょう。従来からも申告するのを忘れていたという例が多かったのですが、漏れていても特別控除と2分の1課税があるので助かっていたのが実状ですが、これがなくなるとその影響は大きいといえます。これについては事前にどう対処するといったことはできませんが、税負担増になることは覚悟しておく必要があるでしょう。
X.同族会社の役員は今年中に退職?
退職金に対する課税は、次の算式のように退職特別控除と2分の1課税で非常に有利になっています。しかし、外資系企業などで短期に退職を繰り返して、本来は給与として課税されるものを退職所得として受給することによって、この制度を悪用して節税を行うようなことが横行しているようです。そこで次の2点について改正が検討されています。
- 20年を超える期間について適用される70万円を廃止する。
- 短期勤続年数の退職者については2分の1課税を適用しない。
そうすると長く企業経営に携わって来た創業経営者で、既に実質的に後継者が会社運営をしているような方は、今年中に退職した方が有利ということもあるかもしれません。
図表4
Y.事業所得の経費厳格化
給与所得者と比較して事業所得者は個人の費用を事業の経費にできるのではないかと給与所得者からは見えているようです。もちろん個人の費用と会社の経費をキチンと分けて適正に申告しておられる方も多くおられるのですが、不明確な処理をしている方がおられるのもまた事実です。そこで、適正な記帳に基づいて証拠書類をキチンと整理して申告している方については従来通りの取扱いにしますが、そうでない場合には収入に対する一定の割合しか経費を認めないという取扱いにすべきではないかということで検討するようです。事業所得者の方は従来以上に適正な記帳を行うことが求められます。
Z.その他
給与所得者にとっては、給与所得控除の削減を予定されていることが一番気になる点でしょう。実額控除制度を充実するとのことですが、結果的には増税になることは間違いないと思われます。配偶者控除や扶養控除の改正についても実際に実施されるのは4年から5年程度先になると思われますし、他の項目のように具体的な案が提示されているわけでもありません。もう少し先と見ておいて良いでしょう。
もう一つの話題がいわゆる「長者番付」といわれる高額所得者の公示制度の撤廃です。個人情報保護の観点からもこの制度は廃止される可能性が高いと思われます。
また身近な問題としては住民税の課税の問題があります。これは来年からでもスタートする可能性がありますが、一つは1人4,000円の住民税均等割りです。今まで世帯単位で4,000円だったものが、今年から夫婦は2人分とされたのはご存じの通りですが、今度はこの金額の増額を考えているようです。地方分権を後押しするためとはいえ、税金の負担増は徐々に行われていくようです。
さて、まだどうなるか全く不明ですが、ゴルフ会員権や創業経営者の退職問題などはすぐに対処するかどうか検討してみてください。
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